飛ぶように毎日が過ぎた。
1日があっという間に終わる。
息子はそこまで手がかからないほうだと思う。
ぐずることはもちろんあるけど、夫と二人でお世話しているからそんなに苦じゃない。
息子の世話は夫婦二人でしている。
母は全く関与せず。
あくまで私たちの食事のサポートだけをしてくれている。
つまり、食事の買い出し、料理、皿洗いなど。
確かに助けになっているし、ありがたいことだ。
しかし、とうとう二人とも限界が来た。
もう一緒に生活するのは耐えられない、と。
菩薩のように寛大な夫でさえ、精神的に参ってしまって
「夜子ちゃんのお母さんだから悪く言いたくないけど、
思ったよりきつかったな。
仕事でもいろんな人と関わってるからどんな人でもやっていけると思ってたけど
あの人は難しい。いい勉強になったよ…。」
と言ってしまう始末。
買い出ししてくれて料理作ってくれて皿も洗ってくれる。
しかもこちらがお金を払うんじゃなくて、少しお金を出してくれる。
何それ最高じゃん。めっちゃ助かるじゃん。ずっといてほしいんじゃないの?
と思いきや、まさかの「それも要らないから帰ってほしい」レベル。
そのくらい、言動がひどいのだ。
とにかく攻撃的、高圧的、感情的。
人に何かしてほしいとき、どうするか。
夫だったら、言葉にする。どういう理由で、何をどうしてほしいか。
落ち着いて言葉にする。理性的に対話する。すり合わせる。
母の場合、そういう時はまず「怒る」。
怒りを表情、声、体全体で前面に出して言葉にする。
その言葉や内容には大した意味はなく、「私は怒っている」というアピールのほうが重要で、それを振りかざして人の行動をコントロールしようとする。
私は怒っている。だから私の言うことに従え。そんな感じ。
そこには相手と対話しようとか、相手と対等にコミュニケーションをとろうという気持ちはない。
そして残念ながら、言葉にする前に母の中で何が正しいかは決まっていて、少しも疑わない。
母の考えが絶対的に正しくて、相手がどう行動するのが正しいのかも決めつけている。
母が善、従わないのは悪。自分が正しい、異論を唱える者は間違っている、バカ。
当たり前のようにそうやって感情的な言葉で行動をコントロールしてこようとする母に、私は拒絶反応で同レベルに迎え撃とうとしてしまうし、夫もさすがにイライラして新生児のお世話と相まって精神的にすり減った。
さも自分が正しく相手の意見を聞かない姿勢でずっと生活され、
私たち自身やその生活を否定され、批判され、バカにされ、
忙しく新生児の世話をしている中母ひとりだけ茶を飲みスマホをいじりテレビを大音量で見続けられ、
でかいローン組んで建てたお気に入りの注文住宅にケチをつけられ、
雑に扱われ、傷をつけられ、汚され、
勝手に息子や授乳中の写真を撮られ親戚に拡散され。
まあ色々とあったんだけど、それらを通して夫婦の意見は一致。
「自分たちの食事とか正直適当でいいし、
居ない方がマシだからさっさと帰ってもらおうぜ。」
母は思っていることだろう。
「こんなに尽くしてやっているのにこの仕打ち。なんて恩知らずな。」
私も、表面上だけ見たらそう思う。
しかし当事者にしかわからない、「それでもなお居ない方がマシだと思うほどの苦痛」があるのだ。
きっと母は実家に帰ったら私たち夫婦の悪口を親戚や友達、手あたり次第に言いまくるのだろう。
私もかつては同じように父の愚痴を聞かされた。
しかし今ならよくわかる。
どちらか一方の言い分を聞くだけじゃ何もわからない。都合のいい解釈だけだから。
母の話だけを聞いて賛同していたかつての私は、本当に愚かだったと思う。
なので、言いたいならどうぞ言いやがれ、それで判断されるならば
その愚かな人たちとは今後付き合わないだけのことだ。
幸いなことに私の実家は遠いので、息子を理由に当分地元には帰らないだろう。
自分の親類とは遠ざかっていくばかりだ。
今回の母の件で、一番精神的にきつかったのは、
母の悪いところを散々目の当たりにして、そしてそれは自分にも共通しているということを思い知らされたところだ。
母のことを嫌悪するのと同じだけ、自分も似たような言動をとってしまうことに気が付いて、自分自身が嫌いでたまらなくなる。
その先の未来は孤独だ。
母は父とは家庭内別居。子供たちとも仲がいいとは言えない。
私とも絶縁になったら老後どうするのだろう。
友達や親戚に頼る未来だろうか。
彼らはいつかの将来老人ホームに入った彼女に面会に行くのだろうか。
嫌われる人間とは、そういうことだ。
私はそうならないようにしたい。あんな人と似ているなんて嫌だ。
夫のことも大切にしたい。息子が生まれ、新しい家族の形がこれからできていく。
そんな大切な時だからこそ、ちゃんと自分の身の振り方を改めねばならない。
まずは言動から。夫への言葉や態度から。
いつまでも母の呪いに縛られないように、自分で自分をコントロールしなければ。